遺言によって定めることのできる事項は、法律によって決められています。
典型的には、「○○に全財産を相続させる」といった財産の処分に関する事項、あるいは、祭祀主宰者や遺言執行者の指定に関する事項などですが、何もこれら以外の事項を遺言に記載してはならないというわけではありません。
例えば、遺言に、残された相続人に対する想い、遺言を作成した理由、葬儀の方法などを記載することは自由であり、このように遺言者が任意に記載した事項を「付言事項」といいます。

付言事項には法律上の効力が生じないので、相続人の方は、法律上は付言事項の内容に拘束されません。
遺言の付言事項として「葬儀のときに好きだったあの曲をかけてほしい」と記載しておいても、これが実現されるかどうかは、残された相続人ら次第ということになります。

もっとも、付言事項は、いわば亡くなった方からの最後のメッセージとなりますので、法律上の効力の有無に関わらず、親族や相続人の方の心に響き、遺言者の望んだ結果が実現されることも少なくないと思われます。
したがって、例えば、特定の相続人の遺留分を侵害するような遺言を作成しなければならない場合でも、その遺言の中に、親族間の円満を願う気持ち、このような遺言を作成するに至った理由、相続人に対する感謝の言葉などが記載されていると、これらが記載されていなかったときに比べて、遺留分に関する紛争が防止されることが期待できるのではないでしょうか。