民法には法定相続分が定められていますが、必ずこの法定相続分どおりに遺産を分割しなければならないわけではありません。
相続人間で「遺産分割協議」がまとまれば、自由に相続分を決めることができます。
他方、相続人間で協議がまとまらず、遺言書もないときは、家庭裁判所の調停・審判で遺産を分割することになります。

遺産分割の方法には、大きく次の3つがあります。

◇現物分割
個々の遺産をそのまま分割する方法
例1) 土地と建物は妻が、株式と預貯金は長男が取得する
例2) 一つの土地を土地Aと土地Bの二つの土地に分け、土地Aは長男が、土地Bは次男が取得する

◇換価分割
遺産を売却(換価)して、その売却代金を相続人間で分配する方法
例) 遺産である土地と建物を売却し、売却代金を長男と次男が2分の1ずつ取得する

◇代償分割
遺産を相続人の一部が取得し、その代わりに他の相続人に代償金を支払う方法
例) 遺産である土地を長男が単独で取得し、その代わりに長男が次男に代償金を支払う

遺産分割協議は、相続人全員が参加して行うことが必要です。
したがって、まずは故人の出生から死亡までの連続した戸籍を収集し、相続人を確定させなければなりません。

もし相続人の一部が行方不明の場合には、家庭裁判所に「不在者財産管理人」を選任してもらい、その不在者財産管理人が行方不明者に代わって協議に参加することになります。
また、一定の要件を満たせば、行方不明の相続人について「失踪宣告」を受け、当該相続人を除外して協議をする方法も考えられます。

相続人の中に未成年者がいるときは、未成年者の親権者が、未成年者の代わりに協議に参加することになります。
もっとも、その親権者自身も相続人となるような場合には、未成年者と親権者で利益相反の関係になる(利害が対立する関係になる)ので、このようなときは、家庭裁判所に「特別代理人」を選任してもらい、その特別代理人が未成年者に代わって協議に参加することになります。

また、遺産分割協議というと、相続人全員が一同に会して話し合うというイメージがありますが、手紙や電話でのやりとりによって、協議をすることも可能です。
例えば、相続人同士であまり接点がない場合や、遠方に居住している相続人がいる場合には、書面を郵送でやりとりすることも珍しくありません。